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黒船

黒船

 70年代の日本のロックの流れにおいて、最重要アルバムの一枚がこれだろう。時代の先取り、視野の確かさ、音楽のアプローチと演奏のレベル、そして、参加しているミュージシャンの顔ぶれ。どれをとっても、このアルバムを凌ぐ作品は多くない。  サディスティック・ミカ・バンドは、ザ・フォーク・クルセダーズを解散した加藤和彦が、ソロ活動を経て72年9月に結成したバンドだ。この年の6月に彼のレーベル“ドーナツ・レーベル”を設立、ミカ・バンドとして「サイクリング・ブギ」を発売したのが契機となった。結成時のメンバーは加藤和彦・ミカ夫妻、つのだひろ(D)、高中正義(G)、小原裕(B)。その直後につのだひろは、キャプテン・ヒロとスペースバンド結成のため抜け、高橋幸宏が入った。73年11月に今井裕(K)が加わり、このアルバムの制作メンバーになった。  このアルバムは74年2月からレコーディングが始まり、450時間を要して5月に終了した彼らの二枚目のアルバム。リリースは11月だった。特筆しなければいけないのは、プロデューサーに、当時ピンク・フロイドらを手がけ、イギリスでも絶頂にあったクリス・トーマスを招いていることだ。その前の年、一枚目のアルバム『サディスティック・ミカ・バンド』を持ってイギリスに渡った夫妻のアプローチが形になった。一枚目のアルバムも74年5月にイギリスでも発売された。この『黒船』も『BLACK SHIP』として75年2月に全英で発売されている。「塀までひとっとび」が「SUKI SUKI SUKI」というタイトルで、「颱風歌」も「TYPHOON」としてシングル・カットされた。  70年代のイギリス・ロック・シーンとのダイレクトな関係。歌詞カードやインナーのビジュアルに盛り込まれた浮世絵などの江戸趣味。博多どんたくやチンドン屋を盛り込んだ和風感覚。当時のトップ・クラスのミュージシャンのファンク・グルーブ。洋楽と日本文化の融合という意味でも画期的なアソビ心に貫かれているトータル・アルバムは明らかに時代を先取りしていた。75年9月には、ロキシー・ミュージックのオープニング・アクトとして全英コンサートツアー。その直後夫妻が離婚し、バンドは解散となってしまった。

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